Audio Forum Vol.14

  • 2014.11.28 (金)
  • リスニングポジションにおけるスピーカー伝送周波数特性

11月27日 追記

アコースティックオーディオフォーラムですが、まだ僅かに空席がございます。

また、当日はお好きな音源をお持ちいただいても結構です。CD,USBなど媒体は問いません。

ご予約お待ちしております!

 

11月28日に開催する第14回アコースティックオーディオフォーラムのご案内です。

今回のオーディオフォーラムは、下記のような3部構成を中心として進めていきたいと思います。

A. リスニングポジションにおけるスピーカーの伝送周波数特性について。

B. DAコンバーターとしても定評のあるRMEのオーディオインターフェース、FireFace802の使い方の可能性について

C. 来場者の方が普段よく聞く音源を当試聴室で聞いたり、自由に発言し合うパート

A、B、Cのパートともに30~40分程度、合計2時間程度の予定です。

前回のフォーラムでは、恥ずかしながらあまり音の良くないスピーカーセッティングでスタートしてしまいました。後半からスピーカー位置を変更し、なんとか面目を保てましたが、なぜ前半のセッティングでは音がよくなかったのか?理由の一つとして、スピーカーとリスニングポジションの位置による伝送周波数特性の変化が挙げられます。

今回は伝送周波数特性に着目し、周波数ごとに生じる音圧の凹凸に対してイコライザーで補正をしたとき、どのような聴こえ方になるかをみなさんと一緒に確かめてまいります。

また、RMEの様々な機能を使った”お遊び”も予定しています。


 

機材:
パソコン / i-mac
DAコンバーター / RME fireface802
プリアンプ / アキュフェーズ C-2420
パワーアンプ / アキュフェーズ P-4200
スピーカー / B&W 805Diamond

日時:
2014年11月28日(金)
場所:当社ショールーム
時間:19:00~21:00
アクセスマップ
http://www.acoustic-eng.co.jp/company/kudan/#accessmap

お問い合わせはメール、またはお電話でお申込みください。
※定員に達し次第締め切りとさせていただきます。

皆様のご参加をお待ちしております!

リスニングポジションにおけるスピーカー伝送周波数特性

REPORT Vol.14

  • 2014.11.28 (金)
  • リスニングポジションにおけるスピーカー伝送周波数特性

その1

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更新が遅くなりました。

第14回アコースティックオーディオフォーラム、無事終了致しました。今回のテーマは「1.リスニングポイントにおける伝送周波数特性」「2.RME FireFace802の使い方の可能性について」の2本立てでお送りしましたので、下記にレポートをまとめます。

 

前回の第13回オーディオフォーラムでは、前半は残念ながら良い音をお届けすることができませんでした。理由はいくつか考えられますが、大きな原因の1つとして、前回のスピーカーの設置位置における伝送周波数特性が、リスニングエリアにおいて良い特性が得られなかったのではないか?という点が考えられます。

 

■音の良くない特性を再現してみる

下の特性は前回のフォーラムにて、音の良くなかったスピーカーの設置位置によるリスニングポジションと、スピーカーの設置位置を変更したときの伝送周波数特性の比較です。

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スピーカーの位置は壁側から60センチ手前に移動しただけですが、70Hzのピークがやや抑えられ、かつ100~300Hz付近の帯域が持ち上がることで、結果としてバランスの良い特性になっているのがわかります。

また、今回は実際にスピーカーを移動しての比較検証ではなく、RME FireFace802内のソフトウェア「TotalMix」のイコライザー機能を用いて、前回のスピーカー位置の周波数特性に近づけたもので比較試聴をしました。

前回のフォーラムにご参加された方も何名かおられましたが、前回の再現とまでいかなくとも、特性の違いによる音の違いはご体感いただけたようでした。

 

■リスニングポジションの違いによる特性の変化

周波数特性はスピーカーとリスニングポイントの位置関係で決まりますので、今度はリスニングポイントを動かしたときの特性の違いを検証します。

下のグラフはスピーカーの位置を固定し、リスニングポジションをそれぞれ60センチずつ動かしたときの特性の違いを並べました。

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ここでわかるのは、⑦~⑨のポジションは、①~⑥のポジションに比べて100Hz以下の低音もしっかりと出ているという点です。

わずか数十センチの違いですが、⑦~⑨のポジションは比較的、低音から高音までの特性がなだらかなカーブとなっています。これだけ違うと、楽曲の聞こえ方も違ってきます。

これらの特性の違いは部屋のモードの影響を受けているためと考えられますが、部屋の大きさによって発生するモードの周波数が異なりますので、一概にこの位置が良い、とは言い切れない面があります。

また、そもそも良い周波数特性というのも、楽曲のジャンルの違いや個人の好みによっても評価の基準が異なりますので、やはり細かいセッティングによって最終的な追い込みが必要なのは言うまでもありません。

 

■次回レポートではRME FireFaceを使ったイコライザー調整、マルチ出力の実験、試聴室の室内騒音について報告をします。

その2

■イコライザー調整による比較は有効なのか?

当試聴室のリファレンススピーカーであるB&W805Dですが、リスニングポジションにおけるF特は下のグラフのようになります。

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このうち、1.5kHz~4kHzにかけて約5dB程度の谷がありますが、これをイコライザーで電気的に調整してフラットな特性にしたとき、果たして聴こえ方はどのように変化するのでしょうか?

結果としては、参加者の多くがかけないほうが自然に聴こえる、という意見でした。確かに高音域に属する帯域を持ち上げているので、音の輪郭ははっきりとするのですが、女性ボーカルのサ行の音や金管楽器の音などが人工的な感じがして、自然さが損なわれているように思えます。

 

次にイコライザーで低音域を調整してみます。調整前の特性を見ると、140Hzから下の帯域はあまり音圧が出ていませんが、これは部屋のモードの影響を受けていると思われます。そこで、この部屋の最低固有振動数である36Hz帯域を中心にイコライザーで10dB持ち上げてみたのが右の特性です。このとき聴こえ方はどう変化したのでしょう?

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このときも。参加者の多くがかけないほうが良いと感じたようです。F特的には低域の特性が持ち上がったことで、比較的バランスの良いカーブが描けているのですが、電気的に無理やり持ち上げた特性というのは、特性がどうであれ違和感を感じるようです。

 

まだまだ実験段階であるこの試みですが、当社の見解としては、イコライザーの調整をする場合は、少し色付けをする程度であれば使用しても問題ないと考えます。

F特が大切なのは言うまでもありませんので、それを否定するつもりはありませんが、どれだけ部屋の寸法比に気を付けて設計をしても、リスニングポジションとスピーカーの位置によってどうしても望ましいF特が得られないことは往々にしてあります。そんなときにわずかな調整によって望ましい聴こえ方になるのであれば、手段として活用すべきとは石井伸一郎氏も仰っていることです。このとき、あまりF特のグラフを意識しすぎると本質を見失うことがありますので、F特を参考にしながらも自身の耳で調整していくのが正解ではないかと思います。

■部屋の騒音レベルの影響

ところで今回のフォーラム、前半はまたしても納得のいかない音でスタートしました。前回の反省から、我々スタッフもかなりの時間を割いてセッティングや楽曲選定、楽曲ごとの音圧調整などを綿密に行ったつもりでしたので、序盤の音の出方は正直ショックでした。

ストラヴィンスキーの火の鳥を再生しても、音の立上りに瞬発力が無く、歯切れが悪い。カンターテドミノの合唱においても、広い教会の空間の雰囲気が十分に再現されていない。

このとき、プレゼン用のプロジェクターをOFFにしたところ、それまでとは一変し、我々が調整しているときの聴こえ方にかなり近づきました。

このことから、部屋の騒音レベルが与える影響がいかに大きいのかがわかります。

下のグラフは、当試聴室のプロジェクターをON,OFFを切り替えたときの室内の騒音レベルの違いです。

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プロジェクターをONにしたときの部屋の騒音レベルはNC-25、OFFにしたときの騒音レベルはNC-20となります。1ランクの評価の違いですが、聴感上の違いは明白でした。因みにNC-20というと、多目的ホールや劇場、テレビスタジオといった施設の評価となります。

■次回レポートではオーディオ評論家の村井裕弥氏によるレポートをご紹介します。

オーディオ評論家・村井裕弥氏のレポート

 92年頃の話だ。聴きたいCDがたまってきたので、「ここらでひとつオーディオに力を入れてみるか」と考え、まずはオーディオ誌を買いあさった。そして、誰もが絶讃するベストバイ1位の製品を購入。それまで使っていた機器のだいたい30倍くらいはする高額機が、わが家にやってきた。

 もちろん、大いに期待した。「どんな素晴らしい音が出るのだろう」と妄想を最大限ふくらませて、音出し。しかし、出て来た音はそれまで使っていた製品と大差なかった。ものすごいショックを受けた! 

世の中には「何を持ってきても駄目な部屋」と「何を持ってきてもよく鳴る部屋」があるとわかったのは、それから20年近くのちのこと(もちろんその中間の部屋も存在するのだが、とりあえず無視)。

 そんな単純なことに、どうして気付けなかったのだろう。どうして誰も教えてくれなかったのだろう。オーディオ機器に何百万、何千万と出費する前に、その何分の一かで音のよい部屋を作れば、最短距離でよい音にたどり着けたというのに。

 

 アコースティックエンジニアリングが主催するイベント、オーディオフォーラムに参加するたび、そのことを思い出す。無駄な遠回りや無駄遣いをすることなく、多くの人々がしあわせに音楽を聴けるようになるとよいなあと、心から願う。

 11月第14回の主役はRMEの新型オーディオインターフェイスだった。オーディオインターフェイスとは、手っとり早く言えば、パソコンで音を取り扱う際の入口・出口。じゃあ、A/DコンバーターとD/Aコンバーターを足したもの? いや、その説明に間違いはないけれど、それは機能のごく一部を挙げたに過ぎない。そこで多彩な機能を紹介しつつ、「部屋と音の関係」をいつもとは別の角度から考えてみようという、なかなか興味深い企画となった。なんと、オーディオインターフェイスのイコライザー機能を使って、部屋の特性を補正してみようというのだ。

 

 正直いって、最初はとまどった。「音のいい部屋を作れば、そんなことは不要」というのがこの会社の主張ではなかったのか!? 部屋のあちこちで測定された周波数特性のグラフも配布されたが、「わが社が作る部屋は、リスニングポジションが広く、どこで聴いても快適」という話を何度も聞いた記憶がある。このデータは、それの否定になるのではないか!? 参加者を混乱させるだけではないか!?

 

 会はまず、「10月に出した妙な音を、イコライザーで再現できるか」という実験から始まった。10月のオーディオフォーラムは、ラスト10分を除けば、本当に冴えない音であった。「いつもよりお客様が多いので、スピーカーを壁側に寄せよう」という新セッティングが不発。「ものは試しに」といつもの位置に戻したら、いつも通りの音が出て、皆大笑い!

 スタッフは、その壁側に寄せたときの周波数特性を改めて測定し、いつもの位置にセットしたスピーカーからそれと同じ周波数特性を音を出すべく、イコライザーを操作。

 参加者の中には、10月の音を体験している方が何人もいらしたが、「先月の音とそっくりだ」という声は聞かれなかったように思う。「村井さんはどう感じますか?」と鈴木社長から振られたので、「全然似てないと思います」と答えた。なんかもっと腰抜けでへたれな音だったと記憶しているからだ。

 

 そのあとは、「オーディオインターフェイスのA/D変換機能を使ってLPから作ったハイレゾ・ファイル」を聴いたり、部屋のくせと思われるディップを補正したり、サブスピーカーによって残響成分を補うとどう感じられるか試したり、様々な実験がおこなわれた。

 正直な感想をいわせてもらうと、「LPから作ったハイレゾ」はいささかデジタル臭かったし、部屋の周波数特性をイコライザーで補正した音は、かなり抵抗感があった。サブスピーカーを使った残響成分の付加は、事前になんの説明もなくおこなわれたが、筆者にはデメリットのほうが多いように聞こえた。

 もちろんこの感想は、あの夜聞こえた音についてのものであって、オーディオインターフェイスやパソコンによって、音を加工することを全否定しているのではない。鈴木社長も語っていたが、今後調整を詰めていけば、「これだ!」という一瞬が来るのかもしれない。それはそれで楽しみなことだ。

 

AVアンプの自動補正機能が大きな話題になったのは10年前のこと。筆者も1台買った。リスニングポジションに測定用マイクを設置し、5本のスピーカー+サブウーファーからピーピーガーガー音を出し、周波数特性をフラットにし、位相合わせもしてくれた。初めておこなったときは感激したが、やがて使わなくなった。なぜなら、その機能を完全オフにしたときのほうが明らかによい音だったからだ。

最新のオーディオインターフェイスはあのAVアンプよりはるかに先を行っているから、そんなまぬけなことはない。しかし、ちょいちょいと測定し、ささっと補正しても、それだけで満足させられるほど、人間の耳は甘くないということだろう。

 

 会が始まる前は、かなりヤバイ企画なのではないかと心配していたが、終わってみると「やっぱり部屋だよね」というところに着地できたように思う。それはアコースティックエンジニアリングにとってありがたい結論だが、けしてそのように誘導したわけではないというところに、このイベントの値打ちがある。

 鈴木社長は会の半分以上しゃべりっ放しであったが、それはセールストークとえらくかけ離れたもので、「こんなこと言わないほうがいいんじゃないか」という瞬間が幾度もあった。要するに「こう言ったほうが、好印象を与える(もうかる)」といったことを一切考えず、一研究者として自問自答。そういう時間が長かったということだ。

 驚いたのは、そういう長ゼリフに多くのお客様がしっかり反応してくださったこと。今後の会が、ますます楽しみになってきた。

 

 あと付記しておきたいのは、後半のある時点から突如音がよくなったこと。「エアコンを消したからではないか」「プロジェクターの冷却ファンが止まったからではないか」と諸説浮上したが、それに関する実験(それらを再び動かしての再試聴)はおこなっていないので、確定できない。

 音というのは、本当に繊細なものだなと改めて考えさせられた。

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