アコースティックオーディオフォーラムの番外編として、
ドルビーアトモスの試聴イベントを開催します。
九段ショールームの天井にスピーカーを追加し、
予備配線もなにもしていない当社ショールームにどうやってスピー
また、普段は2chオーディオをメインとされている方も、
詳細は続報をお待ちください!
▶開催予定日
・2月19日(金) 19:00~21:00/OPEN 18:00
・2月20日(土) 13:00~15:00/OPEN 12:00
▶会場
当社九段ショールーム
(千代田区九段北2-3-6 九段北二丁目ビル1F)
⇒アクセスマップはこちら
▶お問い合わせ先
○TEL:03-5829-6035
○E-mail:kusakai@acoustic-designsys.com
○担当者名:草階(くさかい)
☝各番号・アドレスをクリックすると画面が起動します
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去る2/19と20に行われたアコースティックオーディオフォーラムの番外編。
テーマはまさかのドルビーアトモス。つまりはホームシアターである。
しかも、会場に天井スピーカーを設置したというではないか。
AV(オーディオビジュアル)からオーディオの世界に入った私としては、とても興味をそそられた。
まず、アコースティックラボとしては、オーディオルームだけでなく、シアタールームの設計施工を手がけることは珍しくないそうだ。
シアタールームであれば、オーディオに感心のない人(家族・知人・友人)でも気軽に楽しめるし、家に招いての鑑賞会はとても魅力的だ。
もちろん映画だけでなく、演劇やオペラ、ライブなどのソースも楽しめる。自分のためだけの大画面は、寸法こそ映画館には及ばないが、相対的に大迫力を味わうことができる。
設計上の留意点としては、スクリーンやプロジェクターの設置場所、サラウンドスピーカーの設置と配線、映画館を意識した響きのコントロール、この辺りだろうか。
実際、ショールームに天井スピーカーを設置するに辺り、もともとあった吊天井にフォステクスのスピーカーを計4つ追加していた。
写真を見る限り、いかにもスピーカーが付いているという印象はない。
5.1chサラウンドのときから指摘されていることだが、スピーカーが部屋のあちこちに設置される時点で、掃除の邪魔、ケーブルの処理、見た目の問題などで、奥方と闘いを繰り広げた方は多いと思う。
それに加え、ドルビーアトモスは天井にまでスピーカーを設置するというのだから、既存のオーディオルームを持っている方にとっても、導入のハードルが高い点が問題視されている。
せっかくの素晴らしい技術も、文化として根付かなければ発展はない。
アコースティックラボは上記の問題にいち早く着目し、これからのシアターの在り方を、建築音響の専門業者が積極的に提案していくべきだという。
そんな思いでシアター向けのイベントを開催したと、代表の鈴木氏の話は熱を帯びていた。
今後、番外編2があるときには、シアタールームの具体的な設計施工の流れや、いったんオーディオルームとして施工したが、その後シアター向けにカスタムした事例などを聞いてみたいと思った。
理屈はともかく、まずは音を体験ということで「ドルビーアトモスのデモBD」からスタート。
森林の中をカメラが動き葉っぱが舞い踊る「リーフ」、F1レースの模様をシネマティックに描いた「F1」が披露された。
自分の目線と同じ横方向の音場からさらに上方に向けてプラネタリウムのように隙間なくサラウンドが楽しめる。音像の移動がスムーズであり、映像空間への没入度が尋常ではない。
SACDの2chとマルチチャンネルも聴いてみた。
2chの音声を再生したあと、マルチの音声に切り替え同じ曲を聴く。
包まれる感覚はマルチに軍配が上がる。音離れもよい。
実際のホールの音場感よりも音楽として効果的に楽しめるかどうかに力点を置いたソースだと感じた。
マルチはストレートにデコードした場合と、ドルビーサラウンドの演算を通した場合の比較も行った。
ドルビーサラウンドは天井からの直接的な音はほぼ無かったが、包囲感がよりアップした。これは好みで使っていいかもしれない。
念のためもう一回最後に2ch音声を再生した。個別の楽器やメロディーに集中できるのは2chの方だと感じた。部屋の響きが心地いいので、ホールにいる臨場感はそこそこ楽しめる。『この部屋ずるいよ~』と内心思ってしまった。
続いて、音楽ライブのBDを2枚視聴した。
2chは正直おまけみたいな音声トラックであった。どうせテレビやPCのスピーカーで聴かれるからと、あまりこだわってミックスしていないのかもしれない。
マルチチャンネル(5.1ch)になると、途端にライブ感が向上した。スイートスポットが広がり、多少センターからずれていてもライブ会場のように楽しめる。
各楽器やボーカルが見事に分離しているから、脳内で注意して聴きたい楽器に簡単にフォーカスできるのが驚きだった。もちろん単にバラバラなのではなく、そこは絶妙のミックスで調和させていた。海外のソースはさすがレベルが高いと感心した。
ドルビーサラウンドも披露されたが、音像のエネルギーが散ってしまい、包囲感は高まるもののちょっと無理矢理っぽい結果になってしまった。しかし、ながら聴きには適しているかも知れない。
ロジャー・ウォーターズのザ・ウォールはアトモス対応のライブBDである。
さすがオリジナル音声がアトモス対応だけあって、音像は明瞭なのに包囲感に切れ目がなく、視聴もそっちのけですっかりライブに浸ってしまった。
どのスピーカーから音が鳴っているかなど、もうどうでもよくなってしまう。
実際、天井のスピーカーから出ている音はさりげない味付け程度のものであった。にもかかわらず、トータルでバランスが取れているため、全てを忘れてトリップできる圧倒的な音場感を楽しむことができた。
ちなみに音声がアトモス対応の場合は、ドルビーサラウンドは選択できずドルビーアトモスでデコードすることになる。ドルビーサラウンドは、アトモスでないソースを独自のアルゴリズムで演算して天井も含む全スピーカーから出力するモードだからだ。演算量が膨大になるため、DSPをいくつも搭載するAVアンプがアトモス以降増えたのも興味深い。
続いて、アトモス対応の映画を何本か視聴した。
総合して、やはりオブジェクトベースの恩恵を強く感じた。
効果音の定位が実に自然でスピーカーの場所を意識させないのは画期的だ。「何となくこの辺」という曖昧感が一掃され、無理なく自然に映画の中身に入り込める。
アトモスが発表されたときは、どんな派手な音響効果が楽しめるのだろうとドキドキしたが、実際に味わってみると『違和感を徹底的に排除して映画の世界に入り込める』ための技術なのだと実感した。もちろん、派手な効果を売りにしたソフトもあるだろうし、表現の幅を持たせているフォーマットであるといえる。
さて、アコースティックラボのショールームは音楽向けに設計が行われている部屋だ。
そこで映画を楽しめば、部屋の響きが映画館に比べて若干過多になる。
この点、個人的な見解としては、「好みはあるかも知れないが、すぐに慣れるだろう」だ。
根拠は、定在波のコントロールにより不快な響きが極限まで排除されているため、余韻も美しく雑味も少ないからだ。
ステレオを嗜むオーディオファイルにも、ぜひシネマルームとしての役割を兼ねた専用室の検討を進めたい。
アコースティックラボなら、熟練のスタッフと共に好みに応じて調整・検討を重ねられる。
『理屈抜きで楽しめるのが本当に魅力的なオーディオ』
鈴木代表が最後に語ったこのフレーズがとても印象に残った1日だった。
橋爪 徹 プロフィール
オーディオライター。ハイレゾ音楽制作ユニット、Beagle Kickのプロデュース担当。
WEBラジオなどの現場で音響エンジニアとして長年音作りに関わってきた経歴を持つ。
聴き手と作り手、その両方の立場からオーディオを見つめ世に発信している。
Beagle Kick 公式サイト
(http://dimension-cruise.jp/beaglekick/)
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