Audio Forum Vol.1

  • 2013.07.28 (日)
  • 最新のDSD対応ネットワークプレーヤーとその再生環境について-Part1-

第1回 「最新のDSD対応ネットワークプレーヤーとその再生環境について」

■Part1 九段北セッション

解説: オーディオ評論家/村井裕弥氏

7月28日(日)13~15時/15時半~17時半
各回 定員10名様・予約制となります
(申込TEL:090-8462-3021 フシグロまで)
会場:アコースティックデザインシステム・ショールーム
3730-711x533

【試聴機材】
・DSD対応ネットワークプレーヤー sfz DSP-03
・DSD配信対応 NAS BUFFALO LS421D0402P  他
  

 sfz DSP-03

sfz DSP-03



 

村井氏から当日の内容をいただきました↓↓

 

- DSDファイル再生と室内音響の深い関係 -

 CDフォーマットの音を、極力聴きたくない。かといって、今さらLPだけの生活には戻れない。「だったらハイレゾ」という話になるが、マルチビットのハイレゾは、やはりCD臭さが残る。プロテイン飲んで、ジムで筋肉を強化したCD?「いい音にしました」という努力は認めるけれど、そのがんばりがどこか鼻について、音楽にひたりにくいことが多い。

 やはりこれからはDSDしかないと思う。「ええっ!? DSD?」と顔をしかめる方がたまにいらっしゃるが、そういう方の多くはSACDのトラウマを引きずっていて、DSDに未来を感じられないのだろう。
しかし、まったく同内容のSACDとDSDファイルを用意して聴き比べると、その違いは歴然。「DSDっていいですね」と多くの人が喜んでくださる。

 しかし、DSDファイルの再生が可能になっておおよそ1年半が経過するが、それをご自宅で実践している方は意外と少ない。理由はいくつか考えられるが、そのひとつはパソコンをメインに据えた、いわゆるPCオーディオでしか再生できないからだろう。

 「せめてネットワークプレーヤーで再生できたら」

 そう願っていた隠れDSDファンはかなりの数いらっしゃると想像するが、その願いは長く放置され続けた。

 スフォルツァートDSP-03は、そんな私たちの願いをかなえてくれる、おそらくは世界初のDSDファイル対応ネットワークプレーヤーだ。同社がこれまでに作ってきた製品を思い浮かべると、そのクォリティにも期待が高まる。しかし、本当によいものなのか否かは、実際聴いて判断するしかない。7月31日発売であると同社ウェブサイトに載っているが、幸いその前に聴かせてもらえる機会ができた。それも、音のよさでは定評のある防音工事のプロフェッショナル、アコースティックデザインシステムの試聴室で。これはもう行くしかなかろう。

(村井 裕弥)

最新のDSD対応ネットワークプレーヤーとその再生環境について-Part1-

REPORT Vol.1

  • 2013.07.28 (日)
  • 最新のDSD対応ネットワークプレーヤーとその再生環境について-Part1-

Part1 九段北セッション ご来場ありがとうございました

1テーマである『最新のDSD対応ネットワークプレーヤーとその再生環境について』でしたが、存分にその次元の違う音響世界を提供できたと思っていますし、多くの方がその可能性とオーディオの素晴らしさを堪能されたことと思います。

2弊社の試聴機器環境は、プリアンプにアキュフェーズc-2420、同じくパワーアンプはp-4200、SPはB&Wの805ダイヤモンド・ブラックというおなじみの機器。

3それにSFORZATOの新製品 DSP-03(+バッファローのNAS)という組み合わせであった。

 ストレスフリーな音の出方と言ってしまえば味もそっけもないが、音のたたずまいはあまりにも自然・・・・・・録音現場が見えるようだ。
特にほとんど編集の手が入っていないDSD一発録り音源の生々しさには脱帽。コミュニケーション媒体としての音楽の訴求力はただならぬものがありそうだ。

録音方法・編集方法も新たな次元に向かうのではなかろうかという意見もちらほら・・・・・・、でもアーティストにとってはごまかしの効かない厳しい世界になるのだろう。

 それはさておき、お気づきにならなかった人が多かったようだが、広大なダイナミックレンジを持つ、音源・機器類に対して、チョット残念だったのは弊社試聴室の空調ノイズである。
既存オフィスビル空調を流用しての空調なので限界はあるのだが、普段は全く気にならないノイズも、この高性能システムの音の静けさが逆に部屋の欠点を浮き彫りにしたかたちである。

 第一回のこの会はその第二回として、SFORZATOさんの視聴室で8月4日に行う予定になっている。
プレゼンテ―ターは村井祐弥氏に代わって麻倉玲士氏になり、また違った切り口の楽しい会になると思う。

実はSFORZATOさんの試聴室は創業に合わせて当社の設計施工によるもの。
そこで初回製品にしていきなり業界から注目・高評価されたネットワーク・トランスポートDST-01は生まれたのである。
その試聴室は自身の所有する木造共同住宅の一角にあるが、創業者小俣恭一のオーディオの志が高いことを裏づけるようなスペックの部屋である。
備え付けの試聴機器もふくめて新興ガレージメーカーというイメージとは程遠い試聴環境なのである。

 もちろん弊社のそれとは違い空調設備もほぼ完璧、放送局並みのSN比を誇る防音工事がなされている。
空調以外は当社試聴室と設計コンセプトはほぼ同じ(実は当社試聴室の完成は少し後になる)ですから、部屋の響きの質感は似通っている・・・・・、SPなどの機器による再生音の違いはよくわかるだろう。

ご期待してもらっていいと思いますので、是非ご参加ください。

その2

4今月末に発売される高音質にこだわった世界初の DSD対応ネットワークプレイヤー  SFORZATO社のDSP-03を使用し、当日は視聴。

同じ収録内容の音源を使用しPCM とDSD の各フォーマットでの聴き比べなど、参加者にとってその違いを比較しやすい内容であった。
DSD音源の方は、原音、生の演奏の音に近づき、「本来はこういう音であった、こういう演奏だったに違いない」という「心の音、想像の音」にぐんぐんと歩み寄ってきます。
音の前後感や空間の広がりが見えてきて、デフォルメの無い音になり、目を閉じるとその音が演奏された場所に実際にいるような錯覚を覚えます。
これらはもちろん、ただ単にDSD方式だから実現できるものでもなく、スピーカーや部屋の環境の良さの影響も大きい。

これからのDSD音源の普及により、音楽の入口と出口のあり方が変わり、進化するであろうことが確信できるセミナー内容であった。
音の入り口である、ソフトの制作現場、つまり、録音や編集の仕方、音の出口、スピーカーから後の部屋の造りの改善などの改革が起こるのではないだろうか。

 

最後に心に乗った来場者のコメントがあったので御紹介したい。

5「これまで、様々な高音質配信の試聴会に参加し、結果、ハイレゾ音源に対し、懐疑的であったが、本セミナーに参加し、考え方が変わりました。これからは高音質配信の時代だと確信しました。」との事。

これらのコメントからも本セミナーの果たした役割は大きく、良かったのではないかと思う。

 

村井氏によるレポート

当日、コメンテーターとしてお招きした村井裕弥様からレポートをいただきましたので、ご紹介させていただきます。

 



 

アコースティックエンジニアリングのサイトを見ると、すでにレポートが2本もアップされている。講師自身によるレポートはもう不要なのではと思ったが、二番煎じは承知の上で、あの日何を伝えたかったかを書きとめておく。

 

 Acoustic Audio Forumの講師を依頼されたとき、筆者が希望したのは「スフォルツァートDSP-03のお披露目会ならやりたい」このひとことだけだった。
別に、このメーカーと深いつながりがあるわけではない。代表・小俣恭一氏とは、どこかのイベントで名刺交換をしただけの関係。
しかし、スフォルツァートのネットワークプレーヤーが優秀であることは十分理解していたし、世界初のDSDファイル対応のネットワークプレーヤーがどのような出来であるかはいち早く知りたかった。
3そして何より、「DSDファイルのネイティヴ再生こそがオーディオ界のあすを救える」と常日頃感じているからこそ、このForumをきっかけのひとつにして、少しでもDSDファイルの素晴らしさを広めたいと考えたのだ。

話は90年ほど前にさかのぼる。当時先進国はラジオ・ブームで、受信機は大人気。そのあおりを受けたのは蓄音機。
要するに「ただで聞ける方がいいに決まっているじゃないか」という話だ。
 そこでレコード業界の人たちは知恵を絞った。
「ただで聞けるラジオに対抗するためには、音質で圧倒するしかない」

 SP盤は機械吹き込み(電気を使わない録音方式)から、電気吹き込みへと大転換を図り、音質改善に成功。
まあこのあたりをくわしく語り出すと、いろいろ問題点もあるのだが、とりあえずそうだったということにしておく。

 かくして、レコード業界は、ラジオに圧倒的な差を付け、隆盛期を迎える。現在このラジオにあたる存在がインターネットであることは言うまでもない。インターネットさえあれば、とりあえずかなりの音楽をただで聴くことができるのだ。

もちろん筆者もインターネットは利用する。動画サイトをよく見るし、無料試聴も活用する。しかし、それだけでは生きていけない。それは、ファストフードとレトルト食品だけで生きていくのはつらいというのにどこか似ている。
 だから、90年前のように、「圧倒的な音質でインターネットに差を付けるのが一番なのでは」と考えている。とにかく、多くの人々に「DSDならではのもっとおいしい音」を体験していただくのだ。
そうすれば、DSDファイルを愛好する人たちが増え、大きな流れができるはず。またそうすることで、オーディオ界のあすも開ける。優秀なDSDファイルも配信され続ける。
そうなってほしいと、心から願っている。

 筆者宅では、11年の暮れからDSDファイルのネイティヴ再生が可能になった。
もちろんそれは、いわゆるPCオーディオによる再生で、再生時パソコンの電源はONのまま。
筆者は様々なノイズ対策を施しているので、実用上何の問題もないのだが、このノイズを毛嫌いしてPCオーディオの世界に飛び込んでこない方はかなりの数いらっしゃる。

 あと、よく出会うのが「パソコンを、リスニングルームに置くこと自体が許せない」という方。
これは「デザイン的に許せない」という方と「雰囲気が研究室のようになってしまい、音楽にひたれなくなる」という方が半々くらいだろうか。

7 こういったハードルを克服するには、やはりDSDファイル対応のネットワークプレーヤーが欠かせない。
ネットワークプレーヤーなら、再生中パソコンの電源はOFFにできる。
また、外見も間違いなくオーディオ機器だから「外見上パソコンを毛嫌いする方たち」も、抵抗なく部屋に招き入れることができるだろう。
スフォルツァートDSP-03は、筆者のようにDSDファイルの普及を願うものにとっては、正に救いの神なのだ。

 

 筆者は、ミュージックバードというデジタル・ラジオで「これだ!オーディオ術」というオーディオ番組を持っていて、そこで、

○ CDの音
○ まったく同じ演奏を収録したSACDの音
○ 上記SACDとまったく同じ内容のDSDファイル(ダウンロード購入したもの)

といった聴き比べを何度かおこなってきた(この違いが、ラジオを通してでもわかるというのが愉快ではないか)。
本当は7月28日もそれをやるべきだったのかもしれないが、同じことをくり返すのも芸がないと感じ、当日は、

○ DSD2.8メガの音
○ DSD2.8メガを元にダウンコンバートした96kHzサンプリング24bitの音
○ DSD2.8メガを元にダウンコンバートしたCDフォーマットの音
の聴き比べをおこなった。またこれとは逆に、

○ CDフォーマットの音
○ CDフォーマットの音を元にアップコンバートした96kHzサンプリング24bitの音
○ CDフォーマットの音を元にアップコンバートしたDSD2.8メガの音
○ CDフォーマットの音を元にアップコンバートした5.6メガの音

も用意し、聴き比べた。

「私たちがいかに貧しい音(元は悪くないのに、わざわざ悪くした音)を聴かされているか」また「CDフォーマットから作ったいわゆる『なんちゃってSACD』にもそれなりの値打ちはあること」は、十分理解していただいたと感じている。

KORGフリー DSD変換ソフト 「AUDIO GATE 」

KORGフリー DSD変換ソフト 「AUDIO GATE 」

ちなみに後者について最初に提唱したのは、今井商事代表・今井哲哉氏と思われるが、彼は「CDフォーマットによって切り捨てられてしまった情報は、完全には消滅していないのではないか。
それはどこか聞こえにくいところに隠れていて、DSDにアップコンバートすることによって、7割方戻ってくる」と述べている。

 筆者はこれまで、何十枚かのCDを「なんちゃってDSD」化してきたが、今井氏が述べるように「7割方戻ってくるCD」がある一方、「全然戻ってこないCD」もある。その違いがどこにあるのかはまだ不明だ。

 Forum当日は、「DSDファイルが収められているにもかかわらず、SACDがなぜCDを駆逐できなかったのか」という話もした。
筆者は基本的にはSACD支持派だが、不支持派のお気持ちもよくわかる気でいる
そのあたりの微妙なズレについてもていねいに解説させていただいた。

 後半はもっぱら選曲を小俣氏にゆだね、ひたすらDSDファイルの魅力に耽溺。
昨年暮れ、渋谷ヒカリエでおこなわれたRie fuミニ・ライヴの録音は筆者が用意したものだが、「DSDで録れば、これだけ伝わる」ということは、多くの方に共感していただけたと感じている。

 

9 もちろんこの日おこなった2回のForumだけで、世の流れが変わるわけはない。
先日まったくの別件で地方取材をおこなったが、そこで会った方全員が、DSDはもちろん、いわゆるハイレゾの存在自体ご存じないのにはショックを受けた。
しかし、ただ落ち込んでいても無意味だから、今後も地道に広報活動を続けていきたい。

スフォルツァートのネットワークプレーヤーとDSDファイルの魅力をひとりでも多くの方に知っていただく。これは筆者にとって天命のようなものだから。

動画レポート

第1回 Acoustic Audio Forumの様子が分かる動画を公開いたしました!

 
残念ながら、当日の視聴曲は権利関係もあるのでカットしていますが、フォーラムの雰囲気はお伝えできるのではないでしょうか。
弊社の防音工事の特徴でもある、響きの多さも感じ取れるかもしれませんね。

部屋と再生される音の関係にもふれていただきました。

 

DSDと既存のCDとの音の違いについて

vol1-2

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