Audio Forum Vol.13

  • 2014.10.31 (金)
  • なぜ部屋によって聞こえ方が違うのか?

10/30追記

明日のオーディオフォーラムですが、お申込み多数につき、締切とさせていただきましたので、ご了承ください。

お待たせしました。

10月31日に開催する第13回アコースティックオーディオフォーラムのご案内です。
今回のオーディオフォーラムは、下記のような3部構成を中心として進めていきたいと思います。

A. 部屋によってどうして音が変わるのか?良い音の部屋と悪い音の部屋の分かれ目について、当社設計陣が詳しく解説します。

B. 静寂な部屋環境において本領発揮?ネットワークオーディオにおけるNAS・DELA N1Zの素晴らしさを、バッファロー社の開発責任者が解説します。

C. 来場者の方が普段よく聞く音源を当試聴室で聞いたり、自由に発言し合うパート

A、B、Cのパートともに30~40分程度、合計2時間程度の予定です。

DELA N1Zは、第9回のオーディオフォーラムの際にも登場しましたが、オーディオ専用NASの名にふさわしく、空気感、静寂さ、弱音再生の表現力は際立っていました。
ネットワークプレイヤーはSFORZATO DSP-03との組合せとなりますが、この組合せは当社試聴室の常設機器となりました。
また、N1ZはアップデートによりUSB DACとの直接接続が可能となりましたので、参加者のソフトを再生する選択肢も広がりました。


 

機材:
ネットワークプレイヤー / スフォルツァート DSP-03
プリアンプ / アキュフェーズ C-2420
パワーアンプ / アキュフェーズ P-4200
スピーカー / B&W 805Diamond

日時:
2014年10月31日(金)
場所:当社ショールーム
時間:19:00~21:00
アクセスマップ
http://www.acoustic-eng.co.jp/company/kudan/#accessmap

お問い合わせはメール、またはお電話でお申込みください。
※定員に達し次第締め切りとさせていただきます。

皆様のご参加をお待ちしております!

参加連絡先

協賛

なぜ部屋によって聞こえ方が違うのか?

REPORT Vol.13

  • 2014.10.31 (金)
  • なぜ部屋によって聞こえ方が違うのか?

なぜ部屋によって聞こえ方が違うのか?

先月の17,18,19日のオーディオホームシアター展にはじめて出店しました。・・・・と言っても間口2mの小さなブースです。急遽作成のパンフレットを1500ぐらい配布したのと割り当てられた45分間のセミナーを3日間行いましたが、思いの外の手応えにびっくりいたしました。

同じ部屋で行われた石井伸一郎氏の講演も大盛況でした。

想像以上にオーディオにおける部屋の重要性に気づいておられる方が多いと言う事の表れと考えられます。

   

また、当会参加者のアンケートからの声があったように十数回を経た当会ももう少しはっきりと部屋の音響ポイントに絞った方向に舵をきる事にしようと考えております。
しかしながらこの様な趣旨のイベント例があるわけでもなく、模索しながら開催してまいりましたし、これと言った定番プレゼンテーションが決まっているわけでもありません。これからもしばらくは試行錯誤が続くと思いますがご参加者のご意見を取り入れつつお役に立てる楽しい会にしようとおもっております。

部屋の重要性と言ってもどんな音になるのかと言うのがオーディオコンポーネントの試聴同様、肝になるということでは同じです。

部屋はリスナーの耳に届く最終的な音楽情報経路です。
美しい人は美しく、そうでない人はそれなりに…と言う有名なキャッチコピーではありませんが、音の入り口は美しい音楽を最終的に届ける建前からすれば最良の条件を整えなければ…という思いから、NASにDELA NIZを当オーディオルームに常備コンポーネントとして加えることにしました。以前にSforzato社のDSP-03(これも現在常備品となっている)の紹介の会に発売直後のNIZに脇役として登場願い、会終了後に関係者一同で改めて試聴、その性能に好悪の次元を超えて納得したものでした。

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当日はNIZの開発者の一人であるバッファローの山田氏に開発意図・目的といったお話とデモをして頂きました。

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同じバッファローの一般的NASとの比較試聴は高次元レベルとは言え、一聴して解かるものでした。

当日の目玉は「音の見える化」…やはり技術的デモとしてはなじみのない人にも必要と考えて…というテーマのひとつに、次回フォーラムの予習として9ケ所のリスニングポイントの伝送特性をあらかじめ測定、座席における特性の違いを、実際の音を聞いて頂くことにしました。

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F特測定グラフ(9点)

   

   

当日は、参加者で満室予定でもあったので、常設SPのB&W805を後壁に寄せてセッティング(測定上は悪い特性ではないと判断)したのが、DELA NIZという援軍を加えて最上の音を目指したにも関わらず、良い音をお伝えできない状態が続きました。プレゼン用の正面のスクリーンが原因なのか、もしくは満室状態(計16人)で吸音力が大きくなったのか、苦しい理屈を述べながら会は進行。

リピーターの人もおられましたし、主催者としては納得が行かず会の後半の終わり近くになってSP位置を元に戻し、やっと「良い音」で聞いて頂けたという次第でした。

もちろんそれは小生だけでなく、参加者全員の評価です。

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F特測定グラフ(比較)

   

   

参加者の方に「前半も細部の良く見える良い音でしたよ。しかし、SPのセッティングでずいぶん音が変わるものですね…」と慰めの言葉を頂いたものです。

バッファローの山田さんにもなんとか面目が立ちました。
それでも終了後も会は盛り上がり、10時後半にやっとお開き。ありがとうございました。

セッティング失敗の原因は、低減の伝送特性を重視して決めてしまったことにあります。もちろん低減の再生の良否は一般オーディオファイルにとって最重要ポイントであることは間違いないのですが、中高音の反射パターンによる音像の在り方も重要なのです。計らず、次回のテーマの予習セミナー以上の成果があったのではと思っております。

再生音の変化(ベストリスニングポジション探し)とは、単にSPの伝送特性周波数特性(特に低音の特性)のみで規定されるものではなく、反射音の到来方向情報にも起因しているのではないかというテーマが浮かび上がります。

これには石井伸一郎氏も提示しておられるSPの鏡像分布法が理解に役立ちます。

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鏡像分布 スピーカー配置変更前

 

 

 

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鏡像分布 スピーカー配置変更後

 

オーディオルーム造りの基本セミナーのつもりが計らずもセッティングの重要性確認の会になってしまいました。伝送特性とセッティングの関係について報告します。
図イは当初スピーカー位置でのリスニングポジション①、②、③の伝送特性です。スピーカーの位置決め(常設位置からの変更)は③のポジションでの聴感で決めたものです。

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【図イ】 

③の特性でもやはり70Hzのピークがありますが、聴感上はあまり感じることはなくむしろ、低音域の剛性感につながる良さに感じておりました。
ところが、フォーラム当日の異変に気付くに至ったのです。(申し訳ありません・・・)
いつもの伸び伸びとした自然な音場感から、窮屈な広がりのない音になっていたのです。そして、翌日9ポイントの伝送特性を測定した結果、①、②のような70Hzのピーク(80~150Hzのディップ・凹みがあるので70Hzをピークと考える)がある特性になっていました。
フォーラム後半のSP位置(常設位置)の特性が図ロの①’②’③’です。

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【図ロ】 

200Hz以下の凹凸は比較的なだらかで、80~150帯域が上昇、70Hzのピークは減少しております。
電気音響の見方からすれば、とんでもない特性とみられる代物ですが、我々建築音響の見方はこの特性は合格点なのです。(どのような優れたスピーカーの無響室測定でもかなりの凹凸があるのが普通で、それに部屋の特性が加算されたものが伝送特性です。)
当会参加者のほとんどが、移動後の音を良しと判断して頂き、少なくとも低音域の伝送特性は聴感と大いに関係があるということが再認識できました。

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【図ハ】

a.当初の特性(低音が詰まった感じ)
b.常設位置の特性(低音が伸び伸び自然な響き)
c.1オクターブ以上の低域の凹みは低音の物足りなさ
オーディオはもとより音楽における低音の重要性はあらためて言うまでもありません。再生音全体、音楽全体のあり様が大きく変わってしまうほどの役割があるのです。しかし、部屋における低音の制御は決してやさしいものではないということがセッティングを通してわかりました。
聴感の変化は低音の変化によるものだけなのか、SPと聴取位置の関係が変化したのだからあるはずですが・・・。
続く

オーディオ評論家・村井裕弥氏によるレポート

第13回のオーディオフォーラムについて、オーディオ評論家の村井裕弥氏からレポートをいただきましたのでご紹介します。

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 第13回オーディオフォーラムで、コメンテーターを務めた村井です。ふつう評論家はオーディオイベントで講師をつとめるのですが、アコースティックグループのイベントは、「あくまで部屋が主役」「部屋に関する情報を知りたがっているお客様が多い」ということで、部屋作りの技術陣が主導。評論家はその補足というか、突如当てられ、気のきいたコメントを求められます。一見楽そうに見えるかもしれませんが、毒舌ピン芸人同士の即席漫才みたいなものなので、一時たりとも気が抜けません。「あ、いま聞いてませんでした」「考え中です」なんて、間違っても言えないのです。何を振られても、それなりの答えを期待される。これは相当なプレッシャーです。

 しかし、なぜそんな大変な仕事を引き受けたのか。

 すでにご存じの方もいらっしゃるでしょうが、わたくしは拙著『これだ!オーディオ術』(青弓社)で、「オーディオは買い物で終わる趣味ではない」と明言。「どれを買うかに全神経を注ぐのではなく、買ったあとが肝心」と提唱してきました。

 要するに、「使いこなしこそオーディオの楽しみ」と言いたかったのですが、近年その考えに若干変化が生じてきました。アコースティックグループが作る部屋をいくつか訪問する内、「何もわざわざ苦労することないんじゃないか?」という気がしてきたのです。

 わたくしの仲間には、使いこなしの神様みたいな人が何人もいて(わたくしは心底彼らを尊敬しております)、それこそ「ミリ単位のセッティング」を見事に決めてくれたりするわけですが、そんなことをすべてのオーディオ愛好家がマスターしないと、音楽は楽しめないのか!? それは絶対無理でしょう。ごく一部の天才だけが可能なことは、どこの世界にも存在するし、それができないからといってがっかりする必要はないと思うのです。

 針の穴に糸を通すことを考えてみましょう。小さな穴に糸を通すのはたいへんですよね。でも、穴が大きければ誰でも糸を通すことができる。この穴の大きな針こそが「音のよい部屋」なのです。どんな人が、どんな装置を持ってきても、ポン置きで70点以上の音が出る部屋。

 そんなバカなとおっしゃる方が多数かもしれませんが、わたくしは『Gaudio』創刊号で菊池裕介さん(ピアニスト)、『同』第3号で生島昇さん(ディスクユニオンJazzTOKYO店長)のお宅を訪問し、ポン置きで70点出る部屋が存在することを確認しています。

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 こういった経験をへて、14年夏上梓した『これだ!オーディオ術2 格闘篇』(青弓社)には「結局、オーディオの成否は部屋なんじゃなかろうか」という章を設けましたが、ハッキリ言ってこの章の評判がえらく悪い。要するに「部屋に逃げるのは何事か」ということです。「どんなひどい部屋であろうと、そこでよい音を出すのがオーディオ道」そういう上級者が非常に多い。要するに「針の穴に糸を通せるようになれ」ということですね。

 しかし、それは強制することではないでしょう。誰もが時速160キロの剛速球を投げられるわけではないし、超高層ビルやナイヤガラで綱渡りができるわけでもない。人にはそれぞれできることとできないことがある。自分ができる範囲内で楽しめばよいのです。綱渡りなんかできなくても、平地を歩けばそれでよい。何ら引け目を感じる必要はない。ポン置きで70点の音が出る部屋は、正に舗装された平地なのです。

 こういった考え(オーディオ界ではまだごく少数派)を何とか広めたい。そう考えて、わたくしはオーディオフォーラムのコメンテーターを引き受けました。

 最後に、第13回オーディオフォーラムが始まる1時間前のことを書かせてください。とある女性が試聴室(ここは楽器室でもある)で、ピアノを弾いていました。「すごくうまい人だな。誰だろう」と思ったのですが、まだ無名の高校生で、自宅に防音室を作ろうと思い、とりあえず試し弾きにいらしたとのこと。そして「10分くらい弾かせてください」という話だったのですが、なかなか出ていらっしゃらない。どうやら、あまりにもピアノがよく鳴るので、気持ちがよくなって「いつまででも弾いていたい」と思ったらしい。

 この件に関するコメントは遠慮しておきます。オーディオフォーラムは、毎月最終金曜の19時から開催。真実は、ぜひあなたのお耳でお確かめください。

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