Audio Forum Vol.19

  • オーディオルームの防音 と ハイレゾ最前線について

5月14日 追加告知

実例に学ぶ防音工事セミナー

5月22日(金)マンションのオーディオルーム
※22日(金)の部は定員に達したため、予約を締め切らせていただきます

5月23日(土)戸建住宅のオーディオルーム
※23日(土)14:00~の部は定員に達したため、予約を締め切らせていただきます

IMGP0832DSC04757取材時の写真(カメラマン)010

ピアノをはじめとする生楽器演奏空間づくりに多くの実績とノウハウを持つ当社が自信をもっておすすめするプロジェクトです。

さらに
【防音室をつくると音がよくなる?】

これ、実は本当です!
ただし、適切な音響設計と施工ノウハウが必要です。

良いオーディオルームの必要条件は防音空間であること。

静寂に浮かび上がる鮮やかな音と、体を揺り動かす大音量、そして広大な音場が創り出す感動音楽再生空間を体験してみませんか?

1.気兼ねなく音楽を再生したい。他人に迷惑をかけたくない。
2.静かな部屋で音楽を聴きたい。

 

ピアニッシモからフォルテッシモまで余裕をもって再生できる空間

オーディオ機器の能力を100%発揮

Audio Lifeの新しい次元を提供します。

 

 

※22日(金)19:00~の部はお申込み多数につき、締切とさせていただきましたので、ご了承ください。
※23日(土)14:00~の部はお申込み多数につき、締切とさせていただきましたので、ご了承ください。


 

第19回オーディオフォーラムのお知らせです。

前回テーマ「オーディオルームの防音について」が好評でしたが、内容的に消化不良のようでしたので、今回は「戸建住宅におけるオーディオルーム」というテーマに絞って行います。(マンションのオーディオルームは次回以降に取り上げます)

防音性能の可能性と、それに関連する再生音のダイナミックレンジ、部屋のSN比について取り上げます。

※それと同時に、防音工事そのものが、再生音の音質向上に大きく寄与することについても解説します。


開催概要

■5月22日(金)19:00~21:00 [セミナー:マンションのオーディオルーム]
※22日(金)の部はお申込み多数につき、締切とさせていただきましたので、ご了承ください。

会場:九段下ショールーム
※18:00から開場していますので、お早目にお越しいただいても結構です。

(アクセスマップはこちら

140926ショールーム03

当日機材
・Network Player/ SFORZATO DSP-01
・NAS / DELA N1Z
・Pre Amp / Accuphase C-2420
・Power Amp / Accphase P-4200
・SP / B&W 805 Diamond

 

■5月23日(土) 午前の部 10:00~12:00 [セミナー:戸建住宅のオーディオルーム]
                     午後の部 14:00~16:00 [セミナー:戸建住宅のオーディオルーム]
※23日(土)14:00~の部はお申込み多数につき、締切とさせていただきましたので、ご了承ください。

会場:スフォルツァート試聴室

Sforzato

 当日機材
・Network Player / SFORZATO DSP-01
・Master Clock / SFORZATO PMC-01 BVA
・NAS / DELA N1Z
・Pre Amp / Mark Levinson No. 38L
・SP / Musikelectronic geithain RL901K

 住所は日野市新井863-20、京王線高幡不動駅から徒歩8分の場所です。

 当日は防音工事のセミナーをはじめ、同社の最新のネットワークプレイヤーの試聴が可能です。
是非ご参加ください。

 

※22日(金)19:00~、23日(土)14:00~の部はお申込み多数につき、締切とさせていただきましたので、ご了承ください。

 

参加連絡先

協賛

オーディオルームの防音 と ハイレゾ最前線について

REPORT Vol.19

  • オーディオルームの防音 と ハイレゾ最前線について

公式レポート1 再生音量と防音

 

今回も前回と同じく、「再生音量と防音」をテーマとし、金曜日の夜は九段事務所のショールーム、土曜日はスフォルツァート試聴室で午前と午後の2部制にしての開催となった。

我々の予想に反して多くの問い合わせをいただき、残念ながら来場をお断りした方も多数いらっしゃったこと、そして我々自身、もう少し丁寧な説明で解説ができたはず・・・という反省もあり、前回と同じテーマ(もちろんバージョンアップしたつもり)でセッションを行った。

また、前回同様スフォルツァートのフラッグシップ機であるネットワークプレイヤーのDSP-01でのデモとなったが、前回は試作機であったのに対し、今回は製品版でのデモだった。

期待通り試作機を一段と上回る再生音に皆驚かれているようだった。ファイル形式はCDリッピング音源の方が多かったが、その音の良さに、別にハイレゾでなくても…といった感想を持ったのは私だけではないはずだ。

そんなわけで前回同様、金曜と土曜の午後は早々に定員に達することとなり、開催数日前に締切とさせていただいた。何名かの方にお断りしたり、その後申込もうとしていた方にはこの場を借りてお詫び申し上げたい。

そこで今回のレポートでは、当日の防音セミナーについて、配布資料を交えてご紹介したいと思う。


 

01_音の大きさを比較した表。オーディオの再生音量に比べ、生楽器の演奏音の方がはるかに大きな音であることがわかる。

ブルックナー当日再生した楽曲の内、ブルックナーの4番第一楽章の、最も盛り上がりを見せる場面での再生音を騒音計で実測してみた。音圧は約93dB(0.5秒等価騒音レベル)で、上のグラフの生活音レベル60dBから比べると30dB以上大きいことがわかる。 

02_一般のマンションと戸建住宅における遮音性能と、オーディオを気兼ねなく楽しむのに必要な遮音性能を紹介。

03_遮音性能と聞こえ方の評価表。日常生活においてはほとんど隣家を気にせずに生活できるが、オーディオの再生音は生活音よりも大きいので、理想的な音量は出せないのが現実だ。

04_遮音設計の基本とは、①隙間の無い構造で、②質量の重い素材を用い、③2重浮構造を採用することで、かつ床、壁、天井全ての面での対策が望ましい。これにより、質量則では得にくい高い遮音性能を低コストで得ることができる。

05_質量則の透過損失の考え方。部材の厚みを2倍にしても、わずか5~6dBしか性能が向上しない。これによって必要な遮音性能を得ることは現実的には難しいことがわかる。

06_2重浮構造の考え方。この構造も万能ではなく、2重浮構造の間に存在する空気がバネとなり、激しく共鳴する現象が生じ、特定の周波数で性能が低下する。そのため、2重浮構造の空気層は10cm以上確保しないと、期待される性能が出ない。

07_戸建住宅における2重浮構造の考え方。床の仕上材…というより、仕上材も含んだ床構造全体によって、SPに音は大きく変わる。これはピアノやチェロといった床に接する楽器全般に言えることで、当社では浮構造側の床もコンクリート床とすることを推奨している。

08_マンションにおける2重構造の考え方。マンションでは180kg/㎡までが限界である。10㎝のコンクリートは230kg/㎡であるため、床にコンクリートを打つことが現実的に難しい。そのため、マンションではボード材を張り重ねる工法を採用している。

09_ペアガラスとシングルガラスでは、ペアガラスの方が遮音性に劣る。2重の面材間の空気層が小さいと空気のバネとして働き、共振現象が起こり、男性の声の帯域あたりがかえって透過したやすい状態になってしまう。

10_窓の遮音設計は非常に重要。引き違いサッシは隙間ができやすいので、防音性能が低い。また、経年変化によるパッキンの劣化も起こりやすい。パッキンをこするのではなく、押し潰す扉形式のサッシが有利。

11_防音ドアの性能は30dBで、通常のドアの20dBよりも2ランク高い…とは言え、実際に聴くとそこそこ聴こえるのが現実。戸建の場合、ドアから漏れた音がサッシや玄関ドアを経由するので、更に減衰が期待できるが、同じ宅内への性能強化なら防音ドア2重化が必須である。

 

 

これらは防音に関するイロハのイとも言ってよい基本的なことであるが、それでもきちんと説明しようとするとすぐに30分、1時間と時間が過ぎてしまうのが悩ましいところである。

 また、「防音工事をすることで、良い音の部屋になる」・・・ということについても触れたかったが、それは次回のイベントで詳しく取り上げるつもりなので、ご期待いただきたい。 


 

それではここで、当日の参加者のアンケートの一部をご紹介したい。

N様
通常の試聴会では部屋について触れられることが無いため、大変興味深く聴けました。
オーディオルームについて、新築、リフォーム含めさらに詳しい話が聞けると嬉しいです。

W様
木造の部屋の防音について詳しい話をもっと聞きたい。
今回は初めて参加しましたが、実際再生音を聴かせていただいて、部屋の重要性を改めて認識できました。

Y様
音は究極的にはやはり空気の振動だなと感じています。
部屋は最大の楽器だと思っています。
機器の部屋の効果的なあり方(吸音と反射)を追求するフォーラムを希望します。

M様
防音については一戸建ての実際の現場で体験できたので大変参考になった。
エアコンの音対策にも納得させられた。結果的に部屋の中が快適な空間になっていた。
長くいる部屋なので、音響性能に加えて居心地の良さも大切だと感じた。

T様
説明が丁寧で分かりやすかったです。
実際の住宅で音を聴けたのでイメージがつかみやすかったです。

評論家・村井裕弥氏のレポート

5月も、アコースティックオーディオフォーラムに参加することができた。事前に「前月とほぼ同じ内容」と聞いていたので、緊張感がなくなるのではと気にしていたが、実際その場にいると、例月に増してスリリング。選ばれた音源が異なるのと、参加メンバーも4月とは異なるからだろう(予約者急増のため、リピーターになろうとしても、なかなかなれない状態が続いている)。あと、前月に持ち込まれたスフォルツァートDSP-01が試作機から量産1号機に替わったこともかなりポイントが高かった!

開会30分前に着席すると、ちょうどダイアナ・クラール『ラヴ・シーンズ』が流れていた。97年にリリースされた同歌手初期盤。クリスチャン・マクブライトの強烈なベースのおかげもあって、発売当時「どこのショップに行っても、これがかかっていた」という記憶が濃厚。いや、ショップだけでなく、オーディオ・ショウでも嫌というほど聞かされた。だから、余程のことがない限り「ふうん、この程度か」で済んでしまう音源だが、珍しく聴き入ってしまったのは、やはりDSP-01量産1号機のおかげだろう(先月持ち込まれた試作機より数段上)。

それも「どうだ、すごいだろう」といったこけおどしデフォルメ・サウンドではなく、ナチュラルでありながら極めてクォリティの高い再生音。こういう品位の高い音は、なかなか聴けるものではない。

ダイアナ・クラールが終わると、次はオスカー・ピーターソン・トリオ『ウィ・ゲット・リクエスツ』。邦題『プリーズ・リクエスト』のほうが通りがよいかもしれない。60年代、オーディオ愛好家たちはこの盤を持って、有名ジャズ喫茶をまわり、「これかけてください」をくり返したと聞く。当時のスピーカーはいまほど低音が出ないので、レイ・ブラウンによるアルコ弾きがうまく再生できず、店主たちは唇を噛んで悔しがったという伝説もあるが、本当だろうか。

ここのシステムでかけると、その低音がいともたやすく再生されるから、「これが再生できないシステムなんてあるの」という気がしてくるのだ。もちろん、ここの低音はオーディオ機器のみが出しているのではなく、強固な床や壁、絶妙な縦・横・高さ比のアシストがあってのもの。そこを忘れてはいけない。

オスカー・ピーターソン・トリオの次はカーペンターズ、ウィリアムス浩子がかかった。ウィリアムス浩子は『オーディオアクセサリー』誌157号の付録CD。これについては、同誌18-21頁の記事(5氏によるすごい力作)をぜひ併読していただきたいが、既出音源の安易なコンピレーションでないところがミソだ。

リッピングされていなかったので、付録CDをOPPOのユニバーサルプレーヤーで再生したのだが、ネットワークプレーヤーの音とどこが違うのかがわかりやすく、改めてネットワークプレーヤーの存在意義を感じた人が多かったのではないか。

会は19時に始まった。まずは防音について、専門的かつ具体的なお話があり、そのあとスフォルツァート小俣恭一さんから、DSP-01についての解説。「先月使った試作機ときょう持ってきた量産1号機の違いについて」がメインであったが、「なぜ音がよいかと訊かれると正直返答に困るんです。世界初何とか回路など華々しいテクノロジーは何もない。『こうすれば音がよくなる』とすでに確立されている手法を、愚直に実践しただけ」というあたりが、特に重要。

そのあとスタッフから、「きょうはこのように進行いたします」という説明があり、ザ・スウィングル・シンガーズが1曲かかった。数年前、インターナショナルオーディオショウで配布されていたYGアコースティックのコンピレーションCDのリッピングデータだが、以前ここで聴いたときとは明らかに違う。そもそもこの程度の音量で、ここまで細部のニュアンスが伝わるわけがない。それでいて「見せびらかし型のわざとらしい高解像度」とは無縁。印象派の油絵を思わせる間接音に、くらくらしてしまいそうだ。しかし、一番すごいのはこれだけ密度感が高いのに、うっとうしい(息苦しい)印象が皆無なところかもしれない。

スフォルツァートDSP-01恐るべし!

次は、まったく無加工なヴァイオリン・ソロ、それもかなりの近接録音がかかった。せっかくDSP-01を使うのだから、と11.2MHzのDSD。演奏者や収録に至る過程に関してはまったく紹介がなかったが、「誰も聴いたことがない超絶録音」であることは間違いない。これほどストレートで立ち上がりがよく、情報量の多い音は初めて聴く。しかし、これが少しも鼓膜に突き刺さってこないのだ(いや、それどころか適度に甘く、みずみずしくもある)。それが11.2MHzのご利益なのか、DSP-01量産1号機のおかげなのか、はたまたアコースティックデザインシステムが作った部屋の力なのか。いや、おそらくそのどれが欠けても、ノコギリの目立てみたいな要素が生じるに違いない。

ここから先は、先月のプログラムに近い。まずはマンフレート・ホーネック指揮ピッツバーグ交響楽団によるブルックナー:交響曲第4番《ロマンティック》の第1楽章。ホーネックはウィーン・フィルのヴィオラ奏者として活動したのち、指揮者に転向した人。たまに間違われるライナー・ホーネックは彼の弟だ。ピッツバーグ交響楽団は、クレンペラー、ライナー、プレヴィン、マゼール、ヤンソンスら歴代音楽監督によって鍛えられてきた実力派オーケストラ。2008年に始まったマーラー:交響曲全集は、エクストン(オクタヴィア)による優秀録音のおかげもあり、非常に高く評価されている。

このブルックナーは3月14日にリリースされたばかりの最新録音。それも、オーディオ・マインドあふれるレーベル、Reference Recordingsから出たから、期待するなというほうが無理だ。

この音源をまずは大音量再生し、次に小音量再生する。といっても大と小では、あまりにアバウトだから、ffで102dBを大音量とし、92dBを小音量とする(これでも大音量だと感じる方が多くいらっしゃるものと思われる)。この両方を参加者に聴かせ、「あなたの好ましい音量はどれくらいですか」「ふだんお宅で実際に聴いている音量はどれくらいですか」という2つの問に答えてもらう。先月同様、「小音量より小さい」「小と大の中間」「大音量よりさらに大きい」をふくむ5つの選択肢から選んでくださいというお願い。

筆者は「好ましい音量」「ふだん聴いている音量」ともに、小と大の中間にマルを付けた。大はそれなりに魅力的だが、1日中この音量で音楽を聴いていたら、筆者の耳がダメになる。「フルオケはffで100dBを超える」といわれても、日頃ボクが座っている席(サントリーホールなど)でそんな音圧は感じられない。

じゃあ小音量を選ぶのかといわれると、これもまた微妙だ。生で聴く小音量と違い、オーディオの小音量は、ppのニュアンスが単調になってしまい、物足りない。ただあらすじだけを追っているような気分。ffの迫り方も今イチ以下だ。

というわけで、大と小の中間にマルを付けた。参加者全員のデータは、スタッフによる公式レポートに載っているだろうから、ぜひ併読していただきたい。

ブルックナーのあとは、マイケル・ジャクソン『BAD』。1987年6週連続全米1位を獲得。世界215か国で1位を獲得し、4500万枚を売り上げた歴史的名盤だ。1988年のグラミー賞最優秀録恩賞も獲得している。こちらは、小音量・中音量・大音量で比較試聴。それぞれの差は10dB。小音量「程よいまとまり」、中音量「これ、ほとんどの人にとっては大音量だよ」、大音量「襲いかかってくる音。若干暴力的」とメモ書きが残る。これも迷わず、中音量にマルを付けた。

アンケート用紙はスタッフによって即回収され、集計中は、遮音についての概説がおこなわれた。その中心は「単層壁と二重壁」について。

そうこうする内、アンケートの集計が終わり、結果が発表された。この結果には前月も驚かされたが、いろんな方がいらっしゃるものだと改めて感じさせられた。そして、最大音量から3dBだけ絞って、もう一度ホーネック指揮ブルックナーを再生。「まあ、程よい落としどころかな」という印象。

そのあと「ペアガラスは意外と遮音性がよくない」というお話を挟み、マイケル・ジャクソン『BAD』を再度最大音量で再生。そして参加者に外へ出てもらい、このありえない音量でどの程度音漏れするのか(しないのか)検証してもらった。

ここまでで1時間半。あとは前月同様、スフォルツァートDSP-01で注目音源を聴く会だ。

念のため強調しておくが、DSP-01は「384kHz32bitやDSD 11.2MHzが再生できるからすごい」のではない。「CDフォーマットであっても、これで再生するとすごい」これが何よりの売りだ。

それを意識したのだろうか。小俣さんが選んだ1曲目は、CDのリッピングデータ。それもお琴の四重奏だ。筆者は幼少時からけっこう琴を聴いているのだが、こんなにも厚みがあって味わい深い音を聴くのは初めてだ。ふだん耳にするお琴がコンソメスープなら、これはビーフシチューのよう。これは楽器がすごい? それとも奏者がすごい?

次は、おなじみ『カンターテ・ドミノ』。1976年にストックホルム、オスカル教会で収録されたオーディオ用チェックソースの定番。2本のマイクとRevox A77だけを使ったシンプルな録音手法の勝利といえるだろう。元来、世界のクリスマス音楽を集めたアルバムだが、日本では教会音楽・宗教音楽名曲集として定着? いや、何よりパイプオルガンの低音がどれだけ出るかとか、合唱が歪まないかといったところばかりが注目されてしまう。

SACDやハイレゾ(192kHz24bit、DSD 5.6MHzなど各種)もリリースされているが、小俣さんはこれもあえてCDからのリッピングデータを再生。

うわっ! これホントにCDリッピングデータなのか(!?)というのが正直な感想。もちろん探せばわが家にも同じCDがあるはずだが、こんな音は聴いたことがない。音階が確かなオルガンの低音は、密度感も並でない。ホールトーンが、ここの試聴室一杯にギュッと満ちている感じ。サラウンド再生しているわけじゃないのに、ここまで広がるのか。女声ソロに不自然な艶がのらないところも好印象。素朴なのに、そこからじわっとニュアンスがにじみ出てくるのだ。ぐわっ(!)とクレシェンドして来る合唱の吸引力・説得力もハンパではない。ここで歪み感を感じさせない再生も珍しい。

3曲目は金子三勇士が弾くベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番《悲愴》第3楽章。2012年10月、エソテリック大間知基彰さんとオクタヴィア・レコード江崎友淑さんがタッグを組んで収録した有名な録音。この日は96kHz24bitのハイレゾがかかった。これほど明瞭でワイドレンジなピアノ録音は、ほかになかなか思い付かない。畳みかける打鍵は恐ろしく強烈なのに、ウッディな響きや、いかにもこの時代のベートーヴェンらしい雰囲気は犠牲にしない。同じ演奏をSACDで何度も聴いているが、ここまでよく録れているとは思わなかった…。

96kHz24bitのハイレゾが続く。次は、ブリテンの戦争レクイエムだ。1963年1月、ロンドン、キングスウェイ・ホールで収録された、作曲者自身が振った演奏(ソ連の出国停止命令により、初演に参加できなかった名歌手ヴィシネフスカヤが、東西冷戦を乗り越えて録音に参加している)。オルガン、4個のティンパニ、14種のパーカッション、混声4部合唱、児童合唱、さらに独唱者3名を加えた構成は、録音スタッフにとって恐ろしく高いハードルであったに違いない。

全曲90分もあるので、第2曲続唱(怒りの日)の冒頭に置かれている「その日こそ怒りの日」を再生。金管のファンファーレで始まる曲だが、楽器による響きの違いが明瞭に聴き取れ、なおかつ見事に溶け合っている。合唱の歌詞が聴き取りやすいところも何気にすごい。そもそも1963年の磁気テープに、こんなにも情報が入った? 信じられない!!

さあ、ここからはDSDだ。開会前もかかっていたダイアナ・クラール。「テンプテーション」はトム・ウェイツのカバー。2.8MHzとは思えぬほどのワイドレンジ。キレと重量感を両立させた、エンジニアの見事なワザだ。ダイアナ・クラールならではの深みのある声も、十全に再生されている。何度も聴いた演奏だが、ギターのうまさ、パーカッションのキレ、ブラシの細やかさと密度感に、もうほれぼれするしかない。

ラストは、DSD 11.2MHzの「ハイパーソニック・オルゴール トロイメライ」。この音源、実は1か月半くらい前DSP-01試作機で聴かせてもらったのだが、やはりそのときとは完成度が違う。「そこに巨大オルゴールがある」という存在感が、オーディオ再生の常識を超えているのだ。

 さっき「DSP-01を使えば、CDフォーマットだって十分満足」というようなことを書いたばかりだが、実際11.2MHzを聴くと、夢は止めどなく広がっていく。

 オーディオは、今後ますます楽しいほうへ進化していきそうだ。

copyright(c) acaudio.jp