Audio Forum Vol.41

  • 2017.05.26 (金)
  • 防音工事をすると音がよくなる!第3回 ~中空二重構造と防振浮二重構造の違い~

Audio Forum Vol.41
「防音工事をすると音がよくなる!(第3回)
 ~中空二重構造と防振浮二重構造の違い~」

 

追加告知

スピーカーから出ている音は素晴らしいのに、何故かリスニングポジションでは音楽的感動が得られない...
そんな悩みをお持ちの方は意外と多い、ということがわかってきました。

今回のイベントでは、日本の一般的な住宅の残響時間の周波数特性について、マンションや戸建てなどのいくつかの事例を取り上げながら解説してゆきます。
これにより、一般住宅が抱える音響的な欠陥や、その対策が見えてきましたので、それを皆さんと考えていきたいと思います。

 

概要

前二回のオーディオフォーラムでは、マンション、戸建住宅とも現代住宅の内装構造が【中空二重構造】になっており、それがさまざまな音響的欠陥・弱点を抱えているという事をお話ししました。

一方、防音工事を実現するには【防振浮き二重構造】にすることが必要なのですが、これにより劇的に再生音が良くなったという実例がたくさんあるのです。
ではなぜ【防振浮き二重構造】にすることが、良い音の部屋につながるのか?
【中空二重構造】とどう違うのか?
その辺りを深く掘り下げます。

【防振浮き二重構造】にした結果の響きのバランス、残響時間の周波数特性などの例を取り上げて、好ましい特性はどういうものなのかを解説します。
それは中低音域の響きの在り方に関わる事柄でこれらは音響的に部屋の基本性格を形づくることになります。

皆様のご来場をお待ちしております。

▶開催日

 1部:5月26日(金)18時~20時 (17時開場)
 2部:5月27日(土)14時~16時 (13時開場)

※イベントの前後に建築音響相談コーナーを設けます。
 部屋造りや音響面でのご相談にお答えしますので、事前にご予約ください。
※試聴ソフトの持ち込み大歓迎です。(LP,CD,ファイル音源…etc)

▶会場
 蔵前ショールーム
 (台東区柳橋2-19-10 第二東商センタービル2号館B棟1階)

▶お問い合わせ先
 ○TEL:03-5829-6035
 ○E-mail:kusakai@acoustic-designsys.com
 ○担当者名:草階(くさかい)
 ☝各番号・アドレスをクリックすると画面が起動します

▶申込みフォームはこちら

参加連絡先

協賛

防音工事をすると音がよくなる!第3回 ~中空二重構造と防振浮二重構造の違い~

REPORT Vol.41

  • 2017.05.26 (金)
  • 防音工事をすると音がよくなる!第3回 ~中空二重構造と防振浮二重構造の違い~

防音工事をすると音がよくなる!第3回
「部屋の響きの長さ=残響時間について」

防音工事と残響時間と音が良くなることは、そもそもどう関係するのか?がテーマです。
オーディオルームを作るという動機の多くは、もっと満足のいく大きな音を出したいと考えるオーディオマニアが少なくない。
小さい音ではせっかくのオーディオ機器性能が発揮できていないのではないか?小さい音では豊かなステレオ音場にどうしてもならないということも含んでいるようだ。

それはそれとして、防音工事をすると音がガラッと変わります。音を外に出さないという目的達成の副産物として、室内音響特性が変化するためです。どのように変化するかというと、 まずSPが楽に鳴るようになると同時に、豊かさと厚みが加わり、音楽を体で聴くようになります。SPの音を客観的に聴く、というより音楽の中に居る、という感じになります。

オーディオという趣味が成立して以来、多くの人がいかに音を忠実に再生するかに心血を注いできましたが、それはほとんどといってよいほどスピーカーからの出音を良くする、ということに終止したのではないでしょうか。
オーディオマニアが出来ることとは、商品としてのオーディオ機器を“選択”することであり、その機器の最終形がスピーカーともいえるでしょう。
だからオーディオに関する議論や評価は、多くの場合スピーカーの出音そのものを対象にした、商品としてのオーディオを機器・アクセサリーの範囲で行われてきたのです。
しかしオーディオ機器個々の飛躍的なスペック向上に伴い、音楽そのものの再生・音場の再現に関心が向かっているように思われます。
もっとも昔から音楽現場(録音現場)の再現を目指すのがオーディオの本道だという方もいらっしゃるはずで、近年流行しているヘッドホンステレオでは満足できない人は今も多いはずです。
スピーカーからの出音は素晴らしいはず?だが、いまいち音楽が楽しめない・・・やはりアンプやスピーカーに問題があるのではないか、という循環迷路に入ってしまう。 否、それがオーディオ道というものだ、それが楽しいのだと肯定的に考える人もいるので、そのこと自体は趣味の領域なので否定されるべきではないと思いますが・・・・

このようにオーディオを部屋を含めて考えない人は意外と多いのです。部屋によって機器が同じでも、再生音がまるで異なる音になること、音のバランス・音色・それに三次元的音像の出来方までも変わることがわかれば、オーディオの楽しみが広がるというものでしょう(・・・これ以上悩ましさが増えるのはたくさん、という声も聞こえそうですが)
 
つまらないCDと思っていたものが別のオーディオ機器で聞くと素晴らしい演奏だったり、音の良いCDだとおもっていたのが、別の部屋で聞くと意外に平凡だったりします。
音楽の素晴らしさ・感動というものをもっとリスナー側に寄せるには、部屋の音環境についてもっと考えられてもよいのではないかと思います。

部屋によってさまざまな再生音の変形があり、それによって再生音の印象も変わることを述べました。それらは反射音・間接音がもたらす必然的なアコースティックな現象なのです。

響きを考える上で必要なことは次の4つの項目です。
A:響きの質(反射音の質)
B:響きのバランス(響きの長さの周波数特性)
C:響きの長さ(残響時間、吸音の度合い)
D:部屋固有の定在波の分布状態

前回は【反射音の質】についてお話をしましたので、今回は響きのバランス(周波数特性)の話です。

 ①内装材(内装下地材)の板振動によって低音が吸われている。

住宅の断面は中空になっています。その中空に断熱材などがはいっていて、省エネ構造になっているのです。

ビニールクロス仕上げになっている場合が一番多く、部分的に板やタイルなどが表面に張られていることもありますが、その下地材が石膏ボード(12.5mm厚)背後に10cmぐらいの中空層があり、それが低音域で共振しやすい構造となっていることなのです。
何かで叩くとゴンゴン(中高域の音も同時に発生するが、、)と容易に響くのですぐ確かめられます。
床も天井も同じです。壁や床が吸音しているなんてことは考えたことも無いと思われますが、実は10~30%ぐらい低音を吸音しているのです。

吸音材というと、カーテンのようなものをイメージしますが、一般的に吸音材と言われる物は、中高音を吸音(耳でも効果がわかりやすい)するものが普通です。
ですからビニールクロスの壁が低音を吸音しているという認識はなく、むしろ中高音の反射する壁と思っているのではないでしょうか。
確かにグラスウール吸音材のような高い吸音率はございませんが、床・壁・天井、即ち空間を構成するすべての面ですので、吸音率が低くても無視できる吸音とは言えなくなるのです。しかも建築歴史的このような中空構造の出現は世界的に見ても高々50~60年前からなのです。

 誰でも経験してることですが、引っ越し前の下見の段階では部屋の響きの長さが気になるところですが、よもや低音を吸音しているなんて思わないのが当然です。
引っ越し後、家具が入ることによって中高音は吸音され、あまり響きを意識しない程度に響きはおさまるのです。
ですから本箱などいろいろ部屋に持ち込むものが多ければ、建築内装段階での吸音は不必要であることも多いのです。

②防音工事をするということは低温の響きを確保することにつながる。

音を遮音(防音)する主役は建材の密度(面密度)の大きい材料です。ちなみに石膏ボードでしたら、3枚も4枚も重ねる必要があります。
重い面材にすることによって振動しにくくなりますし、共振周波数も低音域から超低音域の方に移動しますので、いわゆるおいしい音帯域100~200Hzは吸音されなくなります。

③低音の響きは音楽再生にとって最重要

どんな音楽ジャンルでも低音楽器のパートは必ずありますし、重要な役割になっていることはご存じのとおりです。
建築で言えば、基礎や土台のようなものです。
小口系のスピーカーのラジカセやミニコンポでも100~200Hzの再生はそれほど難しくないので、その辺りをしっかり再生できれば素晴らしい音になるということはご存知の事と思います。
いわゆる低音感というおんはその帯域なのです。100Hz以下の楽器もありますが、その2倍音、3倍音をうまく再生すると100Hz以下の基本がローレベルであっても十分に音楽が聴けるのです。
この帯域の響きが中高と響きと較べて少ないのか、同じくらいなのか、多いのか、、、によって再生音は大きく変わるのです。

④部屋の響きの特性(吸音特性)・バランスはどのようなものが良いのか。

ここで言う響きの周波数特性というのはスピーカーから出た音をリスニングポイントで音圧を測るという伝送特性のことではありません。伝送特性で低音域が十分確保されていても必ずしも低音の充実感につながるわけではありません。(残響時間の測定は5ケ所以上の複数ポイントで測定し、それを平均して算出します。)

典型的な3パターンについて述べます。

Vol.41レポートimg

室内に入っている家具什器などの多い少ないにより、中高音の響きの違いはありますが、現代住居に共通するのは低音域の響きの少なさで、残響特性はイの傾向を示します。
この部屋にカーテンや吸音材などを付加していきますと、ロのようにフラットな周波数特性になります。イの再生音は中高音域中心の明快な響きの音ですが、低音域が薄いので充実感が得られません。

ロのパターンは響きが押さえられてますからさらにスッキリとした響きの部屋になります。
オーディオマニアの一つの到達点です。音の良い部屋、響きに違和感のない満足度の高い部屋となります。しかし大きな再生音は近所迷惑になるし、出せたとしても雑味の多い音だったり、音の飽和感が付きまとうなど限界が見えてきます。またパワーでSPをドライブしないと低域が厚い充実した再生音になりません。
ハの特性は、重くてガッチリした下地材で作られていない限り、このような特性になりません。
防音工事をすると基本的にこのような特性になります。低音の響きが長い特性ですが、決して低音がだぶついた音ではありません。
楽にスピーカーが鳴っているような再生音になります。
音を大きめにしても中高音の濁りがありませんから①と②とは再生音の印象が大きく異なってきます。
小口系スピーカー、小出力アンプでも楽に音が鳴るので、部屋を楽々ドライブする感じになります。

⑤音楽再生に適した特性、モニターに適した特性、ステレオ再生音をどのように聴くか、人によって異なります。音を客観的、対象的(あえて言えばスピーカーから出音)を聴く… このタイプはミキシングエンジニアなどのモニター的な聴き方をする人とか、やや年輩のベテランオーディオマニア(和室などデッドな音環境になじんだ人)はロを特性とする環境を好むようです。
低音を音楽的に再生するにはどうしてもパワーに頼るオーディオになります。
一方を音楽の音場そのものを再生したい、音楽的な場を再生したいという場合はハの特性がお勧めです。
音楽を開放的に楽に自然に鳴らす部屋、そのものが音楽空間になる、音楽の場にいる、という再生の仕方です。
小生の立場としては、モニター的・スタジオ的再生のしかたよりは音場再生を音楽音場再生の方をお勧めします。

 


 

※次回のテーマ もう一つの低音再生の重要課題である定在波のコントロールについて述べます。

低音の違和感=ブーミングの原因は定在波の重なりにある。
低音域の響きの長さは非常に違和感=ブーミングによって生じる場合が知られていますが、その原因は部屋の形から決まる定住波の重なりにあります。低音の定在波は吸音や反射によって無くすことは実用的には出来ません。
 低音を吸音材で吸音することは難しい。反射させて拡散することも難しい。
低音の響きに違和感を感じて悩んでいる人は意外と多い。それならば吸音してなんとかならないかと考えるのですが、実用的に低音を吸音することは拡散すことも難しいのです。
低音は2~10mと波長が長い波なので、分厚い吸音材が必要だったり平面の壁自体に変化つけない限り聴感的変化はあらわれません。 一方、定在波が分散するような部屋の形にすれば、低音の残響時間が長くても、低音の響きに違和感を感じることは全くありません。したがってこのような場合はあえて、低音の吸音をする必要は全くありません。

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