第3回 「小型スピーカー:エラックBS312と部屋再生環境(大きさ)について」
コメンテーター 麻倉 怜士 氏
エラックBS312は、最近、私をもっとも感動させたスピーカーだ。
従来のBS310はこんなに小さくて、こんなに雄大な低音がなぜ再生できるのかとの謎が話題で、エラックサウンドの特質を見事に体現していた。
今回の10数年振りのモデルチェンジは、さらに素晴らしい仕上がりを聴かせてくれた。
潤いが豊かで、響きが美しい。質感がより細やかにった。
大傑作、エラックBS312で、私の好きな音楽をみなさんと一緒に聴く会。
・・・・麻倉 怜士
弊社オーディオルームは15畳で天井高さは3.4mもある。
このような広さの空間をお持ちの方にとって、エラックBS312のような小型スピーカーを選ぶことは適切な選択肢なのか?
BS310から始まる300シリーズの名声は聞き及んでいるが、中高音はともかくとして低音を十分に鳴らしきれるのか?
アサクラ流問題提起・・・・・・面白そうですね。
当社視聴室とエラックBS312の相性は抜群と予想しています。
広大で豊かなステレオ空間の出現にご期待あれ。そしてその部屋の秘密の一端を公開いたします。
・・・・・・㈱アコースティックデザインシステム 鈴木
今回から開催日時を金曜日の夜に変更、都内に通勤するオーディオファイル諸氏のご都合が好かろうとの発言があったのだ。
金曜日の夜ぐらいは遅くなっても・・・・・許してくれる・・・・・・飲み屋に寄りたいところだが、たまには当フォ―ラムに気軽にお立ち寄っていただくのも良いのではないでしょうか。
18時ぐらいから開場、ベルリンフィルデジタルコンサートを軽く放映したり、普段話すこともないゲストの先生方とも気軽に雑談することもできます。
さまざまなオーディオイベントの開催シーズンの真っ只中です。久々の盛り上がりの喧躁会場めぐりにいささかお疲れのかたもいらっしゃるとは思いますが、当フォーラムは小ぶりで静寂空間でのイベントですので、じっくりとゆっくりとオーディオのエッセンスをお楽しみいただけると思っております。
当オーディオルームでの試聴は全員がベストポジションでの試聴というわけにはいかないのは当然ですが、オフセット位置でも十分に試聴に堪えられるのが特徴です。
要するに厳格な聞き方に準ずるレベルのリスニングエリアが広いのです。
そして弱音域まで音が痩せることなく楽に聞けるというのも、着目していただけると思います。
(・・・・・・防音工事による部屋の静かさ・・・・という理由だけではありません・・・・・)
麻倉氏の名解説により、『オーディオ的音の聴きどころ』・『音楽的・音の聴きどころ』をじっくり堪能できるとおもいます。
『小さな巨人』ともいえるエラックの新製品B312の表現力を、如何に音楽空間としての再現力に変換・成立させることができるのか・・・・・・・部屋のありかたのひとつの解答を提供できると思っています。
オーディオルームの響きの特徴を述べるのは難しいので、オーディオ評論家村井 裕弥(むらい ひろや)氏の当社設計施工の某氏宅リスニングルーム宅訪問記の一部を抜粋させていただきます。
失礼な物言いになるかもしれぬが、 ◎◎氏のオーディオルームはけして広いとは言えない。
首都圏でオーディオに取り組む人たちの平均値( そんなものがあればの話だが)おおよそ半分?
使用機器もそれぞれ個性的ではあるが、ここにリストを載せて、 皆が畏れ入りひれ伏すといったタイプの超高額ラインナップではない。
それがどうだろう。実際音を出し始めると、 それぞれの機器を開発した技術者でさえ聴いたことのないようなク ォリティで、音楽を奏で出すのだ。
それもジャンルや録音年第など関係なしに。
☆ 音の活きがよい。特に適度なつやが印象的。何をかけても、 のれる。
演奏者の意図がこの上なくダイレクトに伝わってくる。 しかも、何時間ぶっ通しで聴いても疲れない。
☆ スピーカーの振動板が軽くなったかのよう。 ふだん聴いている音よりはるかに反応の速い音が、 ストレスフリーに放射される。聴き手に迫る。
☆ Aというブランドはよく鳴るが、 Bというブランドはうまく鳴らない。←こういう現象が、 まったくと言ってよいほど起きない。
AはとことんAらしく、 BはとことんBらしく痛快に鳴り切る。ふだん「 このブランドの音は、どうも好きになれない」 と思うような製品でさえ、俄然輝き出すのだ!
☆ 比較的アバウトなセッティングでも、機器がその真価を発揮する。
☆ 中級機あるいはそれ以下の価格帯に属する機器でも、 十分満足してしまう。 問題のある部屋で鳴らされているハイエンド機が、 かわいそうに見えてしまうほど。
ああ、かなわんなあ。
オーディオはやはり部屋だなあ。
4、5日前からの台風27号の接近予報は幸いにも直撃は避けられましたが、雨模様にもかかわらず多数ご来場いただきありがとうございました。
帰宅電車の不通のご心配からわざわざキャンセルのご連絡をいただいた方も数名おられましたが次回をご期待ください。
エラックの新発売スピーカーBS312は前日に輸入元のユキムさんから試聴機が到着、スタンドの組立に多少手こずりながらも、当社常設SPの B&W 805Dの脇に併設置(セッティング位置調整なし)、 慣らし運転を開始しました。
エージングはほどほどに進んでいるのかいきなり快調ななりかたに関係社員一同・・・・・・・納得。
実体感がありながらもさわやかにどこまでも伸びきる高音とやや低重心と感じられる心地よくたっぷりした低音のバランスはとても音楽的ななりかたで、805の面目も如何?・・・・と思わせるに十分。
当日は10人前後の入室での試聴でしたので、吸音力が増大した結果、やや鳴りかたはタイトになった感じでしたが、皆さまいかがでしたでしょうか?
『小さな巨人』と形容しても良いくらいの、音場感表現豊かな鳴りかたは、小型SPの優位性を十分に発揮しながら、以外にも大型SP並みのパワー感(疑似パワー感とは言え・・・・)に迫る姿は魅力十分だったと思います。
BS312の素晴らしさは、多くの評判通りだとして、部屋との相性も十分良かったのではないかと思いますがいかがでしたでしょうか?
相性の良さを音響技術的にあえて言えば、部屋の内装構造が低音域まで癖なくしっかり反射する構造である・・・・・ということにつきます。
放射面(駆動面積)が小さいことは低音のパワー感に原理的に不利であるのも関わらず、ストロークを稼いだ良質の低音を十分に響かせることができるということなのです
日本家屋(・・・・どちらかというと旧式在来木造住宅)の場合は、壁面材・天井面材が薄くい場合が多く、これらはいわゆる吸音材ではないのですが、軽度の低音の吸音構造になっていまして、それが表面積の大きな部分を占めることから、意外と大きな吸音になっていて、豊かに鳴らない場合もあるのです。
古い世代のオーディオ愛好家に大型SP(アルテックなどの本来映画館業務用)を好まれる方がいらっしゃるのは、旧家屋に低音吸音の傾向が顕著であることと関係があるかも知れません。
『やっぱり大型ウーファーでなければ本物の低音再生は無理である・・・・・・』の根拠はこの辺にあるのでしょう。
実は現在、当社のあるオーディオルーム設計進行中案件で、エラック400シリーズダブルウーファーのSPが、貧相にしか鳴らない?・・・・・・なんとかしたい・・・・・・というものであった。
原因は低音域?の吸音過多?・・・・・・と断定。
現場調査では特別に低音の吸音材は一切ないし、よくある高音を吸うカーペットや大きなカーテンがあるわけでもない、しいて言えばロッカー型の戸棚が低音の吸音をしてるかな?といった程度の部屋の感じであった。
厚い絨毯を敷き詰めた会社の重役室?のような妬けに静かな響きではないし、会話などは普通に楽にできる。
ステレオ再生音も部屋の高音の響きは適当感じられて、いわゆる明らかに吸音されているという感じは全くない・・・・・・。
しかしあえて・・・・原因は低音域?の吸音過多・・・・・・部屋の大きな表面積を占める、壁と天井の断面構造が低域と超低域(50Hz以下)の吸音する構造なのである。
・・・・・・・これは見た目では分からないが建築的・音響的視点で見れば低音の吸音構造なのです。
これは現在の日本の内装建築では普通に良くある断面構造ですので、評判のよいSPなのに、なぜか音がさびしい、豊かさがいまひとつである・・・・・
要するにSPが鳴らない・・・・・・という場合は、一度このケースを疑った方が良いかもしれません。
高音を吸音しすぎて音がキツイ、固い、広がらない(音場感が狭い)・・・・・・ということは比較的よくある話しであるが、実は意図しなくても結果的に低音が吸音状態にあるという場合があるということを知っておくのもよいでしょう。
この例の改造結果は年明けには何らかの形でご報告できると思います。
閑話休題・・・・・・
オーディオルームの設計・施工のノウハウのひとつは高密度・高剛性の部屋を作るということである。
(・・・・・・もちろん話の続きはあって、これでお終いではもちろんない・・・・・)
当視聴室の作りの構造はその対極にあるといってもよい。
おいおいその断面構造のお話はしていくことになります。
スピーカーの鳴りがいまいちなのは・・・・・スピーカーの非力のせいにしてませんか?(やはり大型SPにしなければ・・・・・・)
スピーカーの鳴りがいまいちなのは・・・・・・アンプの非力(アンプのパワー不足)のせいにしてませんか?
デッドな部屋、ライブな部屋・・・・・・デッドな部屋にもいろいろ違いがある。
ここ靖国神社境内の銀杏並木も紅葉の兆しが加速、日増しに晩秋を感じる季節になりました。恒例のオーディオフェア―の期間も過ぎ、皆様方につきましてもイベント行脚に少々お疲れの方もいらっ者るのではないでしょうか。
秋の夜長に自宅でじっくりとオーディオを楽しむいちばん良い季節なのかもしれませんね。
ついつい大きな音を出してしまってご近所・ご家族から・・・・・・・・・『防音工事』する羽目にならないように・・・・・・。
閑話休題・・・・・・・『じっくりと等身大の空間で試聴』できるという当イベントも3回目になりました。イベントや店頭試聴では得られない本当の実力を吟味するこのようなイベントの重要性は少しづつご理解が得られつつあるように感じてます。
・・・・・・さてミニマムサイズのスピーカー・エラックBS312が如何に鳴ったか?
当日は10人前後の入室状態での試聴会でしたので、普段の部屋の状態より吸音力がかなり大きくなり、小型SPの再生環境としては厳しいのかなと思ってましたが・・・・・・・いかがでしたでしょうか。中高音のエラックサウンドは実に瑞々しくさわやかな素晴らしい音ということは誰でも認識できたはずです。
音の広がり感、中低音の充実感がどうなのかといえば、決して悪くはなく『小さな巨人』の面目躍如といった感じでしたが、前日の数人の試聴ではより素晴らしいものでした。オーディオフェア―などでのデモなどで本当にSPの実力なんて判るのかな?というのは建築音響屋としてはいつも疑念してるのです。
当日、会の開始直前に測定した結果をお見せします。
いわゆる伝送周波数特性といわれる、典型的な測定データです。
左側のグラフはインパルス応答より得られた周波数レスポンスです。電気音響の世界ではとんでもない劣等生の測定結果(・・・…電気音響の世界ではあり得ない応答特性)に見えるのでしょうが、建築音響の世界ではきわめて優等生的測定結果といえます。
測定は20KHzまでですがさらに高域までツイーターは伸びているはずです。
建築音響測定では一般的に中高域はSPの特性が素直に得られますが、低域にゆくに従って部屋の特性が重畳、デフォルメされてゆきます。それもSP直前(この測定では50センチ)の場合はそれほどでないにしても、より離れたリスニングエリアではほとんど部屋の影響を受けた低音を聞くことになるというのが、実態なのです。
『建築室内音響』的に表現するならば、SPからの直接音エネルギーよりも、反射音の総体のエネルギーの方が大きい場合が多いのです。
反射音は空間的情報を持ってますから、広がり感や奥行き感に関係してきますし、波長の長い低音は部屋が小さいこともあり、様々な位相の反射音によって大きなレスポンスの乱れにつながるのです。
広がり感や奥行き感はSPの位置、角度などやリスニングポイントによって変わりますし、低域のレスポンスはかなり変化する場倍も多く、巷間に言われるセッティング・チュー二ングが重要になってくる・・・・・・、
オーディオ愛好者にとっては腕の見せ所になるのです。
・・・・・・・・・というわけで改めてこの伝送周波数特性(部屋を含めたSPの伝送周波数特性)は50Hz以下で定在波の影響が若干ありますが、まずまず優秀な特性といえると思います。
右の棒グラフは同じくパソコンを利用しての1/3oct別の音厚測定ですが、内容は昔からある古典的な測定、定常伝送周波数特性です。
人間の耳は曲面グラフの細かい凹凸特性を聞いているのか?といえばそんなことはなく、どちらかといえば、このようなグラフから得られる感じに近い音として聞こえます。
中音500hzに対して31.5Hzでもおおよそマイナス15デシベル、それ以下でもそこそこ低音の音厚があることがわかります。
16センチのスピーカーでも80Hz以下はだら下がり特性が当たり前だった昔のSPの常識ではとても小さなSPとは思えない特性です。40㎝級ウーファーの特性だとしても優秀な特性といえます。
しかし大型SP派の人から言わせれば・・・・・・・・・・
低音はやはり大口径SPに限る・・・・・と言われそうですが・・・・・・・・
確かに低音感は大きく異なります・・・・が、小口径SPの低音の優位性もあることはあるのですよ。
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